子ども達がペットボトルを集め、遊びながら楽しく潰す。潰したペットボトルは再生業者が回収し、回収したもので製品をつくり世の中に還元する。目的はリサイクル文化や人のつながりを地域に根付かせること。あくまで子ども達の入り口は遊びながら楽しく!そのためのおもちゃ感覚で使える分別用の子ども椅子を開発しています。
(コーディネーター)
今回はハーズ実験デザイン研究所のムラタチアキさんにプロデューサーをお願いされていますが、ムラタさんは、よくご存じだったのですか。
(株式会社久宝金属製作所 川添光代)
はい、ムラタ先生のセミナーには数多く参加させていただいています。私どもはいつか先生とご一緒にお仕事をさせていただきたいと考えておりました。
(コーディネーター)
ムラタさんは、株式会社久宝金属さんをどのようにご覧になっておられますか。
(株式会社ハーズデザイン実験研究所 ムラタ・チアキ)
久宝金属様も日本の中小企業が置かれている“空洞化”という典型的な状況にあります。実際、一部の機械が稼働していないし外注も多い。
僕は常に企業のコアコンピタンスを考えて行動に移していくのですが、じゃあコアコンピタンスって何と問われたときに、僕は知恵の活用しかないと考えています。わずかに自社でできることさえも外注してしまうと、本当の強みに気付かないまま下請けで終わってしまうことが多々あります。そういう意味では、今回のプロジェクトは中小企業がどのように自社の開発商品をつくり、下請けからの脱却を図るかということもテーマとなっています。
(コーディネーター)
久宝金属様はすでにレールシェルフPROをはじめ、幼稚園児向けのお魚ハンガー「キンダーフック」などオリジナル商品を独自で開発されていますから、中小企業の中でもモチベーションが非常に高い会社ですよね。
(ムラタ)
はい、久宝金属様に関して言えばオンブランドをつくるにあたって何の問題も感じられない会社です。ただ、この事業の本質はペットボトルを潰す椅子というものづくりではなく、リサイクル文化や人のつながりを地域に根付かせる“仕組みづくり”。そのためにはまず子ども達にこの取り組みに参加してもらい、彼らに媒介になってもらうのが一番だろうと考えました。子どもができることは誰でもができることですから。
(コーディネーター)
このプロジェクトのキーワードは「地域」であり「文化」ということですか。
(ムラタ)
日本人は社会とかコミュニティを大切にする気質をもともと持っています。このプロジェクトでは、その根っこの部分を最大限に引き出せるような仕組みを考えたいですね。子ども達がちゃんとしているのに大人がいい加減なことはできないでしょう。
(コーディネーター)
ペットボトルを潰す椅子をつかって、具体的にはどのようなリサイクルのシステムをお考えですか。
(株式会社久宝金属製作所 古川多夢)
堺市の浜寺にあるペットボトルの再生業者で根来産業株式会社様にご協力をいただきながら、4つぐらいの幼稚園でこの椅子を置いていただき週一回もしくは月一回潰したペットボトルを回収するというモデルケースをつくっていきたいと考えています。
(ムラタ)
まず最初は小さなコミュニティで実験をしながら、CSR事業として展開するためのモデルケースづくりをしたい。しかしこれは販売につなぐための話題づくり、子ども達が楽しげに椅子でペットボトルを潰している様子、潰したペットボトルがトラックに積み込まれている様子、回収先の工場で再生されている様子などを撮影し、ひとつの物語として動画で配信するなどの活動を通して実際の商品を一般家庭に販売していく。
椅子の開発は今期中に必ず仕上げます。年内には試作を重ね、来年からは量産するための設計にかかる予定です。
(コーディネーター)
一般家庭に販売する場合、そのペットボトルをどうやって回収するのかというのも課題になりますね。
(株式会社久宝金属製作所 古川)
コンビニなどではペットボトルだけで、ゴミ袋を4~5回ほど交換するそうです。
いまは椅子の開発と、モデルケースのフレームづくりを考えるのに時間がかかっていますので、一般売り後の回収方法まで手が回っていないというのが実情です。僕はモデルケースを構築するなかで、業者を巻き込んでの回収システムが地域の中に根付くのであればBtoCというよりも業者向けのBtoBもありかなと思っています。
まずは椅子を完成させながら、その仕組みづくりも検証していきたいですね。
(取材日:2011.9.14)
久宝金属製作所の「ツボ」
・創業者が「下請け仕事をせずに自社製造の台所用品をつくった」という点に注意。製品開発に慣れています。
・環境貢献型の製品と、ペットボトル回収システムの両方をプロデュースしようとしています。
・まずものづくりに注力して、いい製品ができた時点で一気に市場投入を図る、という手法を取っています。
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