リングポンプ


プロデューサーの果たす役割とは?

  • 2012年6月11日(月) 06:20 JST
  • 投稿者:
    matsumoto

小型チューブポンプの専門メーカー・株式会社アクアテックは、薬液投入や洗剤混入に加え、医療やバイオなどの技術分野にも積極的に参画しています。今回の採択事業のプロデューサーであるアイ・シー・アイデザイン研究所代表取締役・飯田吉秋さんは、同社のブランディングにあたり、企業をひとつの人格として捉え、将来の企業のあり方、将来の製品展開の指針を示すという独特の手法を取っておられます。今回は飯田さんのプロデュース手法について、お話をうかがいました。




進むべき方向性を「見える化」する。

(有限会社アイ・シー・アイデザイン研究所 飯田吉秋さん)


アクアテックさんとは、松下電器産業株式会社の中で同じ釜の飯を食っていた間柄です。音響機器テクニクスブランドの開発プロジェクトでは、世界でナンバーワンになることを目指していました。この頃から、自分の中で目標(目的)を立てて物事を分析(整理)するのが常と癖なっています。

ものづくりは、ものを作ること自体で価値を生み出していきます。アクアテックの技術的なクオリティは非常に高く、そのクオリティをより多くの人の感動につなげていくために、プロセスや考え方を整理することが、プロデューサーとしての自分の責務だと考えています。
アクアテックは、チューブポンプを開発していますが行為は、いわば「液体などの「流れを創造する集団」です。流れる量、質、情報をコントロールするのがミッションです。そう位置づけることで、モーターで一定量の液体を送り出す機械、というだけでなく、医療、バイオの分野までも視野に入れることができるようになります。

自分がプロデューサーとして意識しているのは、玉川社長のメッセージを受けて、方向性をきっちりと決める役割です。社長といろいろ話をしながら、企業の取り組みを思想的な次元で捉え、そこからものづくり全体のビジョンを描いていきます。いいかえれば、「会社のあるべき姿」をデザインしているのです。そうすることで、会社がどの方向に向かうべきかを、社長の玉川さんが判断しやすくなるのです。

織田信長は桶狭間の戦いにおいて、何万もの軍勢(1/10とも言われている)を3千の軍で破りましたが、そのベースには、情報を集めて、状況を的確にとらえ、みんなの意識を整えて進むという戦略がありました。デザインプロデュースにおいても同じで、大事なのは、会社を一枚岩にすることです。みんなが目的を共有して進んでいくことで、1の力が10になります。突拍子もないことをやって会社のバランスを崩すことなく、流れに沿って事業を展開していくことが重要なのです。
                          
ものを作るだけではなく、将来勝ち抜いていくには、まず何をするべきか(目的)を考える必要があります。ここでデザインが果たすべき役割は、単にスタイリング、ファッション、フォルムといったことではなく、設計、機能をベースに積み上げてきたものを可視化する、という部分にあると思っています。


他とのつながりを、どう作っていくか? 


(株式会社アクアテック玉川長雄社長)

僕の出身地・浜松には「やらまいか」という言葉があります。「一丁やってみようじゃないか」という意味です。江戸時代に、天竜川が増水した時には東海道を行く人たちが足止めを食い、宿場などに集まってガヤガヤやっていました。そしてその中から、いろんなものが生まれてきました。この「気軽にやってみよう」といった気風から豊田自動織機、本田技研などの企業も興りました。


ここで大事なことは、アイデアはゼロからは絶対に出ないということです。いろんな人たちとのやりとりの中で、今までのストックがつながり、興奮とともに新たなアイデアが生まれる瞬間があるのです。


僕らが今関わっているプロジェクトでは、異なるジャンルの技術者が集まり、そこで必要となる道具を作る、というところから始まっています。便利なものを作ろうという意識から、新たなものが生み出されるのです。

(飯田さん)

デザインプロデュースにおいては、いろんなものを見て情報を集めること、他とのつながりを構築していくことが大事です。アクアテックだけでも、大学だけでも出来ないことをやるために、つねに新しい人たちとの協力体制を作り、新しい要素を組み入れ、そのことで価値ある方向へ効果的に進み出していくのです。そのためには「自分たちにはこれができる」とアピールするのではなく、「自分たちはこういう姿勢でものづくりをしているので、ぜひ協力してください」というメッセージを届けることが大事です。


(コーディネーター)

そういうオープン・プラットフォームの中で、この技術はこう使えるのでは、という発見はどのように生まれるのでしょうか?


(飯田さん)

情報をたくさん集めていれば、自然とそういう気づきは起こります。つねに目的と問題意識を持ち、いろんなネタを集めていることで、解決策を感覚的に呼び込んでいるように思います。全然畑違いの人と話していて、相手が関係ないと思って話していることが、思考する目的の大きな流れの中で発想に結びついていくことです。


(玉川社長)

飯田さんは、面白いと思うことをいつも一生懸命探っていますね。



プロデューサーは、何を残すか?

(コーディネーター)

飯田さんは、このプロジェクトにいつまで関わり続けるのでしょうか?プロジェクトから離れる時には、企業に何を残すのでしょうか?


(飯田さん)

モノは目の前からどんどん消えていき、プロジェクトを支える人も変わっていきますが、しっかりとした考え方や方法は普遍的です。社長もプロデューサーも、いずれは自分がそこから離れる時を迎えますが、社会との関係性の中で、誰のために、どういうものを作っているかを明確にしておけば、そのマップ(未来計画図)をもとに、調整しながらその企業は未来に向かって進んでいけると考えています。


(玉川社長)

吉田松陰は早くに亡くなりましたが、明治維新の志士たちに指針を残しました。それに近い感じでしょうか。

(取材日 2012.5.22)

アクアテックのプロデューサー・飯田さんのツボ

山納さん・<飯田さん>プロセスや考え方を整理することが、プロデューサーとしての役割。

・<飯田さん>デザインプロデュースにおいては、いろんなものを見て情報を集めること、他とのつながりを構築していくことが大事。


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