大阪タオル工業組合(加入者数:101業者)では2012年11月に、販路開拓、卸商との連携を目的に、東京開催の4つの見本市「インターナショナルギフトショー」「JWFジャパンクリエーション」「ビオファオーガニックEXPO」「テキスタイル・ファッション・コンシェルジュ展」への出展を行いました。今回の出展における戦略について、大阪タオル工業組合の中澤理事長、プロデューサーの尾原さんと、出展企業の方々にお話をうかがいました。
2012.11.21
大阪タオル工業組合 中澤茂理事長・プロデューサー 尾原久永さん
於:スタジアムプレイス青山
分野別見本市への出展にシフト
中澤理事長
「テキスタイル・ファッション・コンシェルジュ展」は、大阪・泉州地域に集積する綿織物・毛織物・タオル織物・ニット・毛布などの繊維メーカーにより構成される「大阪繊維産地活性化ネットワーク協議会」が、泉州ブランドの周知と販路開拓を目的に、大阪府の委託を受けて開催した展示会です。今回は31企業・組合が出展しており、組合からは19社が出品しています。卸商だけでなく、百貨店、セレクトショップなど小売のバイヤーがかなり来場しており、反応から売り場の人も泉州のタオルに興味を持ってくれていると実感しています。
また、この展示会と同時に開催されている、「JWFジャパンクリエーション」(於:東京国際フォーラム)には反物素材を得意とする2社(竹村タオル・美由喜タオル)が、「ビオファオーガニックEXPO」(於:東京ビックサイト)にはオーガニック・環境・安全を前面に出している1社(ツバメタオル)が、組合からそれぞれ出展しています。また9月に開催されたギフトショーには、ギフトゾーンを牽引する5社が出展していました。
組合では数年前から、大阪・東京の2会場で、一般消費者向けの新作展示会を開催してきました。展示会を通じて消費者ニーズを把握し、問屋への提案力を高めることを目的としてきましたが、今年はこれを東京のみの開催とし、代わりにターゲットを絞った分野別見本市への出展に力を入れています。
組合名ではなく、企業の名前を前面に
今回の分野別見本市への出展では、先進的な組合企業が、企業名を前面に出すことを強く意識しています。各メーカーがそれぞれの特色を活かし。得意な分野で、自社の名前で提案していくことで、新たな市場を開拓していくとともに、組合内での競争を促していこう、という考えによるものです。
大阪のタオルは後晒しゆえ、どうしても似た商品になり差別化が難しいのですが、生活に密着した部分、つまり安全性や吸水性の良さ、実用性、値頃感などの強みを発揮すれば、ブランドを構築していける可能性はあると思っています。組合の中には、全国のデパートに商品を卸し、何度もリピートがかかっている会社もあります。
組合事業のため、特定企業のえこひいきは良くないという考えもありますが、私は結果ではなく機会の平等をと考えています。全体の底上げとしては教育事業の充実を考えており、勉強会などでみんなが研鑽できる機会を作りつつ、そこで「何か作ってみたい!」と思った企業には、打って出る場を用意する。目立つ企業が増えていくことで競争が激しくなり、業界全体のレベルが上がっていく。その上で、「泉州こだわりタオル」の名前を全国に売っていく。そういう循環を作っていきたいと思っています。
プロデューサー 尾原さん
同組合の事業について、「AKBの総選挙」というイメージをお話しいただいてきましたが、それに加えて「モーニング娘。のユニット」という要素もあると感じています。
一般消費者向けの展示会はまさに総選挙で、各企業が切磋琢磨を重ねて出展に臨んでいますが、今回の分野別見本市では、取り組みを通じてレベルが上がってきた数社がユニットを組み、今までとは違うステージに挑戦する、という形になっています。
これまでの取り組みでは、「泉州こだわりタオル」ブランドアピールの方に旗振りをしてきましたが、最近ようやく、企業を前に押し出していける環境が整ってきました。「組合の事業なんだから、組合のために」から、「個人のネームを売りましょう」と。そこに舵を切ったからには、みなさんもついて来てくださいよと、組合員の方々を鼓舞しています。
他分野に進出して、見えてくること
美由喜タオル・代表取締役 北浦照彦 さん 於:東京国際フォーラム
「JWFジャパンクリエーション」はテキスタイルの展示会なので、素材を探しに来ている会社や学生さんが多いようです。うちの会社では普段からタオルケットやバスローブなどの反物を中心に作っていますが、タオルのイメージから離れた素材を、アパレル業界のどこにどう提供できるかを探っている感じです。
タオル生地は重たいと言われていますが、技術的には薄くすることは可能です。またタオルの機械でもパイルを出さない織り、多重織りなどもできます。またタオル生地は縫製が難しいのですが、織物を密にして、縫製にも工夫を凝らすことで対応できると思います。
アパレルの業界に来ると、タオル独自の機能の優位性で勝負できなくなるという厳しさがあるのですが、だからこそ産地全体で情報を共有して盛り上げていき、新たな市場を作っていく必要があると感じています。
ツバメタオル 代表取締役社長・重里豊彦さん 於:東京ビッグサイト
「ビオファオーガニック
EXPO」は有機・ナチュラル製品に特化した展示会で、環境意識の高い人たちが集まっています。業種としては化粧品・食品関係が多く、タオル卸商の姿は見られません。タオルはノベルティとして使ってもらえる商材なので、あらゆる業種に対してチャンスがあり、異業種の方が多い場所に出て行くことには、大いに可能性を感じています。また海外からのお客さんも多いので、環境に対する取り組みを海外に知っていただき、それを国内にもフィードバックできればと考えています。
うちのブースでは「食べれるタオルの店」という看板を掲げ、食用色素やコーヒー・ココア・紅茶・緑茶などで染めたタオルを出展しています。安全なタオルだということが伝われば、赤ちゃん用の商品として、主婦の方々の関心を集めることができると思っています。
泉州タオルは乾燥工程が1回だけなので薬品の使用量が少なく、また水質の基準が世界一厳しい瀬戸内で作っているので、環境にやさしい商品なのです。私は泉州タオル全体の意識を環境に向け、「機能性プラス環境」として産地全体でアピールしていきたいと考えています。そのためには、自社がまずこの分野で利益を出し、それを示していくことだと考えています。
大阪タオル工業組合の「ツボ」
・組合事業ですが、横並びではなく、やる気ある企業を押し上げようとしておられます。
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