「資源ごみ圧縮いすの開発と、地域リサイクルネットワークの確立」に取り組む(株)久宝金属製作所。子どもたちがペットボトルを集め、遊びながら楽しく潰す。潰したペットボトルは再生業者が回収し、そこから新たな製品をつくり、世の中に還元する。リサイクル文化や人のつながりを地域に根付かせることを目的に平成23年度にスタートした同プロジェクトの現状をレポートします。
開発での試行錯誤
久宝金属製作所 古川専務
試作機の第1号は23年度秋に完成し、その後複数の幼稚園、保育園でアンケートに協力いただきました。その際に「エコ活動をさせたい思いは強いけれど、子どもたちは思いもつかない動き方をするので、安全性が完全に保証されないと導入は難しい」との声をいただきました。
1号機ではペットボトルが完全につぶせなかったこともあり、その後安全性・機能性を向上させるための改良に取り組みました。
株式会社ハーズデザイン実験研究所
ムラタ・チアキ氏
2号機は24年春にできました。支点から座面まで距離を長くし、てこの原理を使って簡単につぶせるようにしました。下にウレタンを置き、子どもが下に潜り込んでも大丈夫なように配慮しましたが、安全だと思ってもらうための印象づけが、まだまだ不十分でした。
今回のプロジェクトは、久宝金属にとって初めての取り組みでした。本業の専門性が活かせない、社会実験的な内容のため受けいれられるかどうか分からない、高いレベルの安全性を求められるなど、かなり難しい課題に取り組んでいるという実感がありました。
久宝金属製作所 古川専務
本業から離れた全く新しいことに取り組んだため、この開発一本に打ち込める環境になかったのが大変でした。
久宝金属製作所 川添社長
子どもたちと一緒に、新しいリサイクルシステムを立ち上げたいという理念が、苦しい時のモチベーションを支えてきました。他の人たちに分かってもらうことの難しさを痛感しました。
改良を重ねて生まれた3号機
ムラタ氏
3号機では、椅子型から自販機型(上から入れて下から落とす形)へと、大幅なデザイン変更を行いました。また素材を木から、久宝金属が得意としている金属をベースにしたものに変えています。ここに至るまでに、スケッチはラフも含めると100枚以上描いています。
古川専務
3号機の構造ができたのが24年夏。試作が完成したのが今年2月のことです。「子どもの力で、楽しく、安全にペットボトルをつぶす」というコンセプトは当初から全く変わっていませんが、椅子型ではなくしたことで、手で勢いをつけられる、ペットボトルが潰れるところを見られる、というメリットが生まれました。
今年3月には、奈良県香芝市にあるハルナ保育園に試作機を持ち込み、子どもたちにペットボトルをつぶしてもらいました。「ガチャポンみたい!」子どもたちが楽しみながら次々にペットボトルを潰す光景を見て、意を強くしました。
今後の展開について
ムラタ氏
現在、量産化モデルの試作に取り掛かっています。支点部分を透明にして「てこの原理」が見えるようにし、また色目もカラフルにしています。
また、キッズデザインアワード、Gマークなど、いくつかの賞にエントリーしています。結果が出る夏から秋頃に、幼稚園で撮影させていただいた映像のWEBアップ、メディアへの声かけを集中的に行っていこうと考えています。
また現在、同商品をクラウドファンディング案件(*)として提案しています。何万個も作る商品ではないのですが、社会実験としての趣旨を理解し、寄付的な意味合いで出資に応じてくれる個人投資家と出会えれば、またファンドについてネットで紹介いただくことで、商品について広く知ってもらうことができればと考えています。
(*)不特定多数の人にインターネット経由で出資を募る資金調達方法
古川専務
潰したペットボトルの回収と再生についても、専門の業者との間で現在話を進めています。今年度中にプロジェクト全体を形にできるよう、頑張っていきたいと思っています。
2013.6.11
久宝金属 川添社長・古川専務 ハーズ実験デザイン研究所 ムラタさん
於:ハーズ実験デザイン研究所
久宝金属製作所の「ツボ」
・収入がまだ見込めない開発と、収入が見込める製造とのバランスをいかに取るかは、新商品開発時の大きな課題です。
・3号機は、これまでの発想を根本から変えることで生まれています。
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