創業60年、台所用品・内装金物・インテリア製品の製造など、暮らしにより添い愛着を持って使われる製品を開発してきた株式会社九宝金属製作所。
今回は「子どもが楽しく使える資源ごみ圧縮いすの開発及び、地域リサイクルネットワークの確立」というテーマで、子ども達が環境問題を自然に体で覚え、考える基礎づくりを目指しながら、モノ(資源ゴミ圧縮いす)とコト(リサイクル文化)の仕組みのという両輪の創出をめざしています。
(コーディネーター)
久宝金属製作所様の創業はいつ頃ですか。
(株式会社久宝金属製作所 川添光代)
創業64年になります。祖父が戦地から戻り、親類の機械を借りてアルミの台所用品を問屋向けに卸していました。40年程前、取引先である問屋の社長が海外視察に行き「これから日本にもホームセンターの時代がやってくる」とホームセンター業界に積極的に参入されました。その後、その企業から棚受けを頼まれて製作したのがきっかけで、弊社は台所用品の製造から棚を製作する様になりました。
(コーディネーター)
久宝金属製作所様はグッドデザイン賞やJID Design Awardを受賞されていますね。活動そのものもデザインを軸にした開発が得意な企業という印象を持ちますがいかがですか。
(久宝金属製作所 川添)
私が社長を引き継いだ14年前、祖父が下請け仕事をせずに自社製造の台所用品をつくったように、自分達で考えたものを製造販売していきたいと強い思いがありました。
2002年、喜多俊之先生のセミナーに参加する機会があり、先生が話された「デザインとはかっこいい形をつくることではない。暮らしぶりの提案です」という言葉に涙がぽろぽろ出るほどに感銘を受け、それなら弊社でもできるかもしれないと思い、社員全員で様々なセミナーやワークショップに参加させてもらいました。
勉強を始めて最初に開発した製品がインテリア棚受けでした。この初めて開発した自社製品であるインテリア棚受けがグッドデザイン賞を受賞しました。グッドデザイン賞をいただいたものの、インテリア棚受けはあくまで棚受けでインテリアショップには置いてもらえない、やはりインテリアショップで売れるものをつくりたかった。そんな時、あるショップの方から「お得意様が家を建て、収納もたっぷり取ったがここに棚が欲しいと思っても棚受けは付けたくない、棚板だけ付けることができればいいのに」と話していたと聞き、これはいけると思い試行錯誤を繰り返しながら「レールシェルフPRO」を開発しました。2007年のインテリアライフスタイル展に出展しました。この製品でJID Design Award賞をいただきました。
(コーディネーター)
アルミの台所用品からホームセンター向けの棚受け、インテリア棚受け、レールシェルフPROとよりデザイン性の高い商品開発を目指して来られましたが、デザインに目覚めて喜多さんをはじめあらゆるデザインセミナーを社員全員で聴き、学ぶ事で自分達も何かをつくっていこうという風に社員全員のポテンシャルは上がっていきましたか?
(久宝金属製作所 川添)
そうですね、やはり私が企画してモノをつくり展示会で大きな賞をもらってもその喜びを社内で共有するのは難しいなと感じました。自分が直接かかわっていないと“すごいですね、社長は”と他人事になる。やはり社員と喜びを共有したいので、2008年に新製品会議を設け、社員、パートにかかわらず参加しアイデアを出しあい、絞り込んで製品化したのが“子どもが楽しみながら自分で片付けができるキンダーフック”です。
(コーディネーター)
今回のプロジェクト「子どもが楽しく使える資源ごみ圧縮いすの開発及び、地域リサイクルネットワークの確立」にも子どもが楽しみながらというキーワードがありますね。
(久宝金属製作所 古川多夢)
はい、弊社が持つテーマのひとつに“子どもたちの自立”楽しく自分で何かをする、身につけるというものがあります。また、自ら子どもが考えるきっかけをつくるという点では、今回のプロジェクトの一番の目的である、子ども達が環境問題を自然に体で覚え、考えていく基礎をつくるというところにも通じるものです。
(久宝金属製作所 川添)
私自身、4人の子どもを育てながら主婦業を長年やっていました。その中でエコ的発想がとても大切だと感じていましたので、子どもたちに美しい地球、日本を残したいという思いは強くあります。そのためレールシェルフPROにもあえて循環型工場である四万十市の大正町集成材工場の桧を使用しています。
(久宝金属製作所 古川)
最終の到達点はリサイクル文化や人のつながりを地域に根付かせることですが、あくまで子ども達の入り口は遊びながら楽しくということで、まずはおもちゃ感覚で使える分別用の子ども椅子を開発しています。
(久宝金属製作所 川添)
子ども達が缶やボトルを集め、遊びながら楽しく潰し、潰したものを再生業者が集める。それが製品として再生され、子ども達に見える形で循環する流れをつくる。私達は子ども達に美しい地球、日本を残すための第一歩になるプロジェクトだと信じています。
(取材日:2011.9.14)
(次回につづく)
・創業者が「下請け仕事をせずに自社製造の台所用品をつくった」という点に注意。製品開発に慣れています。
・環境貢献型の製品と、ペットボトル回収システムの両方をプロデュースしようとしています。
・まずものづくりに注力して、いい製品ができた時点で一気に市場投入を図る、という手法を取っています。
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