今回残念サンが開発したのは、鉄の手袋です。調べてみると、鋭利な刃物から手を守るためのステンレス製の手袋は、世の中に実在しています。もしかしたら、残念サンの取り組みも「結果オーライ」になるのかも知れません。が、ここで問題なのは、「この商品開発がニーズから始まっていない」という点です。
ある新商品を開発する際には、「シーズ発想」と「ニーズ発想」ということが言われます。
シーズ(=種子)発想とは、「技術や素材やアイデアが先にあって、それをどうすれば商品にできるだろうか」と、自分視点から始める発想法です。対してニーズ発想とは、「お客さんはこんなニーズを持っているが、それを満たすことができる商品、サービスはないか?」と、お客さん視点から始める発想法です。
別の言い方をすると、シーズ発想は「自分が売りたいものを売る」、ニーズ発想は「お客さんが求めているものを売る」ということです。このシーズをどういうニーズに適合させるか、という発想なしに、デザインプロデュースを進めるのは危険です。
自動車教習所では、自分の都合のいいように状況を判断し、危険を予測しない運転を「だろう運転」と呼び、厳しく戒めていますが、これは新商品開発でも同じです。いい商品を作ったら、あとは勝手に売れていくだろう、多くの人がそう楽観的に考えてしまいがちです。この見込み違いをなくすためには、普段から自分の視点を「作り手」から「使い手」に切り替える癖をつけて、「これはあり得ない」と思う部分を絶えず消していく必要があります。
中小の製造会社が、なんとか下請けを脱却したいと、社長や役員の思いつきで商品を出す。誰かが求めているからではなく、自社商品がほしいからつくる。こういう話はとても多いです。新商品開発にあたっては、誰のための、どんな問題を解決するための商品なのか?新商品を開発することで、会社をどこに持っていきたいのか。中小企業側も、仕事を受けるデザイナー・プロデューサーも、プロジェクトに取り掛かる前に、この点をまずしっかり押さえておいてください。
サイト管理者はコメントに関する責任を負いません。