この漫画の4コマ目は、「明日のジョー」のホセ・メンドーサのパロディです。とめどなくイメージが拡散していく発注者を前に途方に暮れるデザイナーの心境を、矢吹丈との対戦中、恐怖から一瞬のうちに白髪になったホセの心境になぞらえてみた、というと解説しすぎですね・・・
デザインの発注に慣れていない人は、断片的なイメージでもいいからデザイナーに伝えさえすれば、こちらの意図を汲んで素晴らしいデザインを仕上げてくれると思いがちです。でも、自分がどういうデザインを良いと思うか、自分なりの落とし所はどこにあるかをデザイナーとシェアしておかないと、いつまでたっても納得のいくデザインが上がってこないという不毛な結果を招きます。そしてデザイナーは、評価軸が分からないまま作業し続け、いつまでたってもOKが出ないという泥沼戦に突入してしまいます。
デザインを発注する際には、自分が良いと思うデザインサンプルを集めておくなどして、できるだけ具体的なイメージを相手に伝えるようにすべきです。またデザイナーの側も、作業にかかる前に発注者の意図を的確につかみ、早い段階からイメージを共有する努力をすべきです。特に今回の残念サンのように、イメージが拡散したり、前と全然違うことを言ったりする相手の場合には、高度なテクニックが要求されます。
余談ですが、デザインを作り上げていく過程には、自由に発想してデザインの可能性を広げていく「拡散の段階」と、具体的なイメージに落とし込んでいく「収斂の段階」があります。イメージを拡散させることは悪いことではなく、それまで思いもよらなかったアウトプットを得る可能性も秘めています。大事なことは、この拡散と収斂のプロセスを発注者とデザイナーがともに意識、共有しておくこと、またその過程で、デザインを届ける先の消費者や顧客を意識しておくことです。
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